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【2017/12/13 16:03 】 |
「低炭素生活」で家庭はどうなる? 温室効果ガス削減25%削減の根拠は?(産経新聞)
【日本の議論】

 2020年までに温室効果ガス排出量の1990年比25%削減−。鳩山政権が鳴り物入りで打ち出した政策だが、昨年12月に開かれた国連の気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)では、法的拘束力を持つ議定書採択が先送りされた。25%削減は「公平で実効性のある国際的な枠組み」の構築が前提条件。にもかかわらず、日本国内で実際どれだけ減らすべきかといった数値も不透明なままだ。環境省は3月をめどに、25%削減のための中長期ロードマップを決めるとしている。25%削減で求められる「低炭素生活」とは何か。私たちの生活がどう変わるのか。(杉浦美香)

  ■「エコ・コンシャス・デンマーク」展 環境先進国に学ぶ創意工夫

 2010年。10年間使ってきた冷蔵庫をついに買い替えることに。エコポイントがつくため最新の省エネ型を選択した。やはり10年間使ったエアコン2台を買い換えた。長時間使うリビングなどの明かりは蛍光灯だったが、トイレ、浴室などでは白熱灯だった。このため、白熱灯をまずは蛍光灯に切り替える。

 2012年。トヨタのハイブリッド車「プリウス」の価格も約200万円になったことから、ハイブリッド車とガソリン車との価格差が劇的に縮まる。ついには10年間で9万キロ乗っていた愛車も手放し、ハイブリッド車に買い替えることにした。

 2013年。ガス給油器をヒートポンプ給油器に。

 2015年。いよいよ価格も下がったことから、太陽光発電も設置することに。


 国立環境研究所などが、政府の地球温暖化問題に関するタスクフォース(座長・植田和弘・京都大学教授)で、関東地方の2人以上世帯をモデルに、「低炭素化」のために段階的に技術を導入するモデルを描いてみせた。

 ポイントは、省エネの最新の機器を購入することが丸々コストになるのではなく、省エネ製品と平均的な製品との差額が、初期投資になるということだ。

 そのコストも最新の機器のおかげで電気代が節約され、いずれは元がとれ、ひいてはコストを上回る節約ができるという。

■初期投資185万円…、元がとれるのは10年後?

 これで計算してみると、まず冷蔵庫。エコポイントがつく省エネ製品と通常の冷蔵庫の価格差は約1万5000円。エコポイントで9000円相当がつくため、実質の価格差は6000円になる。省エネ型を選択したことによる電気代節約は年3000円のため、単純計算で2年間で元がとれることになる。

 車では、ハイブリッド車と普通の自動車との価格差は20万円。エコカー減税が継続すると想定して、税金の支払いが16万円安くなったため、実質コストは4万円。ハイブリッドは燃費がよく、ガソリン代が年間5万円節約できることから、差し引きで1年間で元がとれてしまう。

 太陽光発電は最も初期投資が多くかかる。平均家庭の3・5キロワットの太陽光パネルを設置したと想定すると、初期投資は110万円になる。民主党のマニフェストにある固定価格買い取り制度で、太陽光パネル設置の10年後の2025年に元がとれ、以降は売電で利益を生むことができる。

 こうした省エネ機器の導入のトータルの実質コストは185万円。家庭のCO2排出量は2016年時点で、70%削減につながるという。

 家庭の排出量は増加し続けており、排出量をどう抑えるかが課題になっているが、省エネ投資で温室効果ガスを大幅に減らすことができる。

 藤野純一・国環研主任研究員は「設備の買い替えを行っていない家庭で、最先端の機器を導入したらどうなるのか、どれだけ効果があるのかということを分析した。消費者は価格の安いものを購入することになりがちだが、長期的にみれば最先端の機器を導入するほうが得になり、温室効果ガス削減にもつながる」と話す。

 ■「断熱住宅」は40年先?

 「90年比15%削減」で、新築住宅に次世代基準の断熱水準になっている必要があると試算された「エコ住宅」をみてみる。

 建て替えの際、断熱住宅にした場合のコストは約100万円。断熱材や2重サッシなどで光熱費が抑えられるが、コスト回収は約40年先と時間がかかる。

 ただ、国は省エネ対応住宅の新築や改築にエコポイントをつける方針を打ち出しており、これが実施されるともう少し早く元をとるようになる。

 しかし、こうした国環研の試算について「楽観視すぎる。エコポイントや補助金はもともと税金。補助金分をコストと相殺するのは二重に計算することにならないのか」「市場が創出され、想定されているように、太陽光発電などの価格が下がるのか」「日々の生活すら苦しいというのに、100万円単位の初期投資を誰がするのか」といった厳しい批判がタスクフォースの会議で上がった。

 ■麻生政権時代の家庭負担36万円説の中身は?

 前政権は「25%削減」を実現するためには「1家庭につき年間36万円の負担増となる」とした。以来、25%削減に反対する産業界などから引き合いに出されたのが「家庭に36万円のコストを強いるのか」といったフレーズだ。

 この数字については前政権時代から、研究者らにより「経済成長を前提にしており2020年には所得は拡大している、コストをひいても現在と比べると所得は増額しているが、国民には減額すると誤解を与えてている」などと指摘されてきた。

 しかし、「36万円負担」というインパクトにはかなわず、数字が一人歩きしていった。

 民主党が政権につき、25%削減の温暖化政策とともにとりかかったのがこの「36万円負担」の検証だった。

 「公正を期する」(小沢鋭仁環境相)ために、麻生政権当時と同じ5研究機関が25%削減に向け検証したところ、初回の会合の場で、日経センターの落合勝昭副主任研究員は「内閣府に36万円について問い合わせをして、日経センターが出していた数字が元になっていることがわかった」と明かした。

 日経センターは、2005年から20年までの平均成長率を1・3%として、可処分所得の減少率と光熱費の伸び率を計算。これを内閣官房がそれぞれ22万円、14万円と計算して足しあわせていたのだ。

 しかし、減少した可処分所得の22万円には、温暖化政策で炭素価格が加算されることによりアップする電気料金分が含まれており、これに光熱費の上昇分を足してしまうと二重に光熱費分を計算してしまうことになるという。

 また、こうした計算は日経センターだけではなく、国環研や慶応大学も出していた。国環研モデルで可処分所得分44万円、光熱費上昇額分11万円、慶応モデルでそれぞれ77万円、13万円。しかし、麻生政権が出したのは一つの研究機関の数字だった。植田教授は「(内閣府の数字の出し方は)不適切でミスリードだった」と結論づけた。

 ■2度目の試算、3度目の正直

 タスクフォースは25%削減について、国内だけで削減する「真水」が25%、20%、15%、10%の場合に分けて、家計に与える影響を計算した。

 省エネが進んでいる日本でもっとも高くつく真水25%をみた場合、家計の可処分所得に与える影響は最大で慶応大学の76・5万円。もっとも低かったのが国環研の13万円だった。

 昨年12月11日に開かれた地球温暖化問題に関する閣僚委員会でタスクフォースの報告を受けた小沢環境相は「技術革新などに伴う経済効果が十分反映されていない」などとして、通常国会までに試算をやり直す方針を示した。新市場の創設といったプラスの効果や技術革新といった観点を入れて計算しなおすという。

 これに対して、タスクフォースの研究者の中から「恣意的にバラ色の未来を描くことになり、逆にミスリードするのではないか」と再度の試算に疑問を呈する声もあがっている。

 ■グリーン投資が描く未来

 昨年10月。東京都世田谷区にある小宮山宏前東大総長の自宅に、小沢環境相や菅直人副総理らが訪問した。

 2002年に建設された小宮山氏の自宅は「小宮山エコハウス」と名付けられ、ヒートポンプや断熱、省エネ型エアコンや電気給湯器、太陽光発電などが導入されている。

 小宮山氏によると、こうした技術を導入するのに使った費用は370万円。毎年30万円程度かかった光熱費が節約できるようになったため、2012年にはかかったコストを回収できるようになるという。

 小宮山氏は「お金があるからできたことだと言われるがけっして裕福なわけではない。が、この投資のおかげで結露もなくなり英断だった。ただ、誰もができるわけではないという指摘は理解できる。初期投資費用で二の足を踏むことがあるだろう。低金利融資など初期投資できる環境を整えればよいのではないか」と提言する。

 投資ととらえるか、コストととらえるのか。短期でみるか、長期でみるか。とらえ方は180度変わってしまう。「公平性」と「実効性」。そして「温暖化を止める」という大義。国も家庭も、難しい選択を迫られることになりそうだ。

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